デザインのひきだし10『凸版・活版印刷でいくのだ!』刊行記念トークショー

【編集長:津田さん、ブックデザイナーの名久井直子さん、露木印刷の露木さん、弘陽の三木さん】
最近はひそかに活版印刷ブームのようで、かなりの人で賑わっていました。お話は終始楽しく、今回の特集をやるにあたってのご苦労話や今までのお仕事のお話などなど。
さすがに職人さんらしく、ぶっきらぼうな物言いの中にも印刷に対する真剣で熱い思いを感じられ、なぜだか私はうれしくなりました。デジタルの文字は美人さん、活字はボコボコしていて、美人ではないけれどやさしさがあると。とても素敵な表現だなと思いました。文字に表情があるので、周りの雰囲気とでもいうのでしょうか、頭にインプットされ、どこまで読んだのかを感覚的に覚えているのだそうです。だから新聞や本なども、ずーと読んでいても目が疲れないので読みたいと思ったし、読んでいられたと。今は疲れるので読む気にならないそうです。最近は本好きですが、もともと読書家ではない私も、同じところをなぞってしまいがちで、読むのに時間がかかってしまうのですよね……かなり遅読です。
活字の場合は文字校正にしても、文字がヨコになっていたり、漢字などは似た字を入れてしまったり、欧文は180°返っていても読めてしまうものがあり気付きにくく(S、Hなど)、現在の校正の仕方とは違うところに気を使わなければならず、これも大変な作業なのだそうです。すべての話が興味深く、へぇ〜なるほど…と聞いていました。すべての行程に手間がかかる活版印刷。その分、仕上がりには味があり、感動するような美しさがある活版印刷。現在の印刷について、特に活版などの状況は、特殊印刷になってしまっているのが寂しいとおっしゃっていました。それでも若いデザイナーなどが、「逆に新しい!」という感性で活版印刷を使い始めたのはうれしいことのようです。ただ、活字に慣れ親しんでいる職人の方たちにしてみれば、活版の特徴のように思われている、圧を強めにかけたものなどは美しくないそうです。デジタル世代からすると、凹凸があり、少しかすれたりしているのが活版印刷だ!という風潮があるようで、その辺のギャップが難しいそうなのです。なので、印刷をお願いする時には、「印圧を強めにして欲しい」「かすれさせて欲しい」など具体的に言ってもらえれば、いかようにもできるそうです。だからお仕事は対面のみで引き受けているのだと。過去にそのようなことがあったようで、少々寂しそうでした。というのも、印圧を強くしすぎると、年月が経った時に汚くなってしまうらしいです。そして、そんな汚いものは自分の仕事として残したくないと。さすが職人さん!とても感動しました。私も同じ気持ちです!そうでなくてはいけないですよね!それでも、新しい感性によって活版印刷が残っていくのは良いことだと。どんどん提案して欲しいとおっしゃる姿勢には感服です。「年寄りの意見など聞くことない!」とおっしゃる三木さんに、若い世代をリスペクトしつつ強いリーダーシップを感じ、逞しかったです。ますます活版に魅せられ、とても有意義な時間でした。