甦る活版本

待ち焦がれていた本がついにやってきましたよ!
 
活字地金彫刻師、「神の手」を持つ男・清水金之助!(御歳89歳)

活字地金彫(活字直彫、種字彫刻)とは、活版印刷で使われる活字のもととなる母型(凹型)を作るための、さらにもととなる種字(父型)を、鉛と錫の合金である活字材に原寸・左右逆字でじかに凸刻していく技術のことです。新聞などに使用される大きさのわずか数ミリ四方の小さな活字材に、下書きもなくまたたくまに美しい文字を彫り上げるさまは、まさに神業。人の手がこれほどの仕事をできるのかと驚くばかりですが、昭和30年代(1950年代後半)にベントン母型彫刻機という機械による母型彫刻が普及するまでは、こうした種字職人が活字を生み出していたのです。

活字地金彫刻師・清水金之助の本をつくる会、blogより
 
そしてこの本が作られた経緯。

かつて、職人の名前は表に出るものではなく、清水金之助さんのお名前も、歴史に刻まれてはきませんでした。しかし、こうして日本の活字を支えてこられ、いま私達にその技術をじかに見せて伝えてくださる清水さんのこれまでの軌跡を、一冊の本という形に留めたいと思い、今回、この“「活字地金彫刻師・清水金之助の本」をつくる会”を立ち上げました。

※今回の本は商業出版ではなく、有志スタッフが発起したプロジェクトです。スタッフが手弁当で集まると同時に「活字地金彫刻師・清水金之助の本」刊行基金を設立し、趣旨にご賛同いただける方、本が欲しいと思ってくださる方にご協力、ご支援をいただいて、限定数百部という形で作りたいと考えています。

活字地金彫刻師・清水金之助の本をつくる会、blogより
 
以前清水さんの実演を拝見したことがあり、そしてこの本が作られることを知り、是非読んでみたいと微力ながら寄付をしました。本の完成記念実演会には伺えなかったので本が届くのを心待ちにしていたところ、先日、本が到着!開けてみて思わず声を出してしまいました。「わ〜お♥」。函入り、美しい布張りの装幀、本文は活版印刷。そして、心待ちにしていた本を目の前に若干の緊張。なぜならいろんな人の想いが詰まっているのが伝わってくるので…。
 
開いてみると、まるで落語を聴いているかのようでした。清水さんの噺家のような軽快な語り口、負けず嫌いな江戸気質。まさに職人な感じで、なんだかうれしくなってしまいます。文章のせいなのか、活字の効果なのか、すらすらと読み進め最後にはホロリと……。
戦争も体験され、お仕事もいい時期ばかりではなかったのに、立ち止まらず進んできた清水さんの笑顔がステキすぎて、実にいいです。(旦那さんのところでのねえやの話は、赤裸々告白か?とちょっとドキドキしましたよ♥)
 
ある職人の軌跡を、職人達が創り上げた渾身の一冊。 
 
「この本だけは何があっても手放すでないよ」と私の遺言にも一言添えて、ずーっと大切にしたい本です。

【活字地金彫刻師・清水金之助の本をつくる会http://kinnosuke.exblog.jp/